ずさんさを極める、実験実習での分析
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- 7月5日
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私が担当する、水圏生物実験の実習が始まった。
この日は、大学構内にある池 (太閤池) で採水してきた試料を吸引濾過するところから開始。
「吸引濾過って?」
これまでの実習では経験がない操作である。
「こっち側でポンプで引っ張って・・・こんなふうに。」
説明しながら進める。
「ろ紙、これが一枚・・・?」
話しているのをふとみたら、ろ紙が何枚も重なって、5 mm ぐらいのぶ厚さの状態の塊をピンセットで持って談義している。

みんなで集まって吸引濾過作業中。果たしてこれは1枚のろ紙なのか!?
「たしかにくっついてはいるけど、そんなにぶ厚かったら濾過できないよ?」
「取れないですよ?」
「そんなことないよ、こうやって、そ~っとはがすの。優しくしないとろ紙がやぶれちゃうよ?」
そんなこんなで吸引濾過の操作が軌道に乗り始めた。
と、そこへ
「先生、水(試料)を全部使っちゃいました。」
「え? なんで?」
「いや、こうこうこうで、足りなくなって・・・。」
「その場合は、太閤池に行ってもう一回汲んでおいで。」
「とってきた試料と全く同じではないけどいいんですか?」
「う~ん。まあ、いいとは言えないけど、仕方がないよね。調査で遠くまで行ってとってきた試料だったら、失敗できないよ、そもそも取りに行けない。
太閤池はすぐそばだからまあできることで・・・。今度は気を付けて。そのかわり、考察では汲みなおしたこととかも含めてレポートにするんだよ。」
「ろ過したポリびん、冷蔵庫にしまうから前に持ってきて。」

試料を入れたポリびん。班ごとに作業してもらって、回収したらこんなラベルだった。
「ん?なにこれ?いつだれがどこでとった試料かわからないじゃない。ラベル貼り直し!」
「年月日時間、採取場所、採取者を書いて。」
別の日には・・・、
「検量線の点(プロット)がバラバラです。」
「ん~・・・。何故・・・。失敗した心当たりないの?」
「ありません。ちゃんとやったはず。」
「どこか失敗したからこんなバラバラになったと思うけどねぇ。研究なら、最初からやり直しになるよ。」
「・・・先生、この次ってどうするんですか?」
「ん? 手順書読んだ?目があって日本語理解できるんだから、読むのが先!」
たいていこんな調子である。
「・・・学生はたいてい手順書、読んでこないよね。」
「読んで来たら、たぶん早く帰れるのに。」
学科の先生と時々こんな話をする。
授業なので時間も限られるし、分析失敗してもまあ、(ある程度はやり直しもしてもらうが)最終的には仕方ないとなってしまう、実験実習。
でも覚えておいてほしい。
今やっている分析の操作は
「研究」で分析する際の丁寧さとは雲泥の差があるということを。
研究の視点からみたら、この実験実習での操作は、「全くずさんすぎる」というか。
ゼミ配属後、「研究としての分析」になったら、少なくとも私は超厳しくなるからね。
分析データが信用ならなかったら、結果も考察も意味がないから、データを出すことに関してはどうしても厳しくなる。
たとえば、
ほら、研究でも吸引濾過は基本操作なのだよ。そして実験実習では2、3試料をろ過しておしまいだが、研究になったらそうはいかない。
南極の水試料も 100コを超えるし、アラスカの水試料も ザッと50はある。
ゼミの実験室では、
「あと150個ぐらいやらんといかんねん・・・。」
「え~・・・死にますね。」
「意外と素早くなるよ、でも、それぐらい別にフツウだよ。」
「!?、そうなんですか?」
そんな会話が繰り広げられる。
論文紹介の論文、よく見てごらん?ちゃんとした雑誌に収載されている研究はそれなりに繰り返し回数やサンプル数を確保しているよ。

アラスカや南極で採取してきた水試料を あらかじめマッフル炉で加熱処理したGF/F ろ紙でろ過中の筆者。当然ろ紙は1枚ずつ分析に使用する。
実験実習は本当に基礎の基礎、この実験実習を履修している学生がゼミ配属されるのは、数か月後。
ゼミ配属されたらいい加減な操作は完全にNGである。
丁寧に作業しないと装置が壊れて数十万単位で修理費も必要になる。
こういう経費は、大学がぽんと支出してくれることはほぼない。
学生から見れば「授業料払ってる!」と思うかもしれないが、それはそれであり、卒論で使っている研究機器などの購入・メンテナンス費は、その多くが教員が心血注いで申請した研究費 (科研費とか)で賄われていることが多い。
ゆえ、いい加減にされて壊されたら、たまったものではないのだ。
実験実習は許容しても、ゼミ生が作業する様子を後ろから「じぃ~」っと見張る日々は続く。



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