ぬるめ池での湖沼係留系の回収がうまく行かず、心残りの4名、リベンジを決行しました。
1年のほとんどが氷点下の南極、それでも私が赴いた時期は南極の短い夏に相当します。南極に到着した12月はそれでもまだ寒く、基地には雪が残り、当然ながら、湖沼も凍結した状態にあります。私達が湖沼係留系を回収できる可能性があるのは、期間の後半に限られます。係留系の回収を予定している湖沼が凍結しているかどうかは、しらせ飛行科の方に観測隊を野外に送り出す際のおついでにお目当ての湖沼の上空を飛んでもらい、写真を撮ってきて(偵察してきて) もらって確認します。飛行科にはもう何年も南極に赴いて毎年ヘリを飛ばしている、南極でのヘリコプターオペレーションの達人がいます。
しらせ飛行科からの手紙
毎年やっていて当然のことなのかもしれないけれど、この心遣いがとてもありがたい。
いろいろな人たちの協力があっての、ぬるめ池の係留系の回収、そして、GPSでのポイントを通過しているのに回収ができなかったというくやしさもあって、もう一度ぬるめ池へ連れて行ってくださいと、隊長に依頼しました。
実は、ぬるめ池での係留系回収に失敗した後、筆者らは別の湖沼に設置している係留系の回収にも挑戦していました。その時はほぼ無風状態。同じようにボートを出して漕ぎだし、GPSで目的の場所へ。あっさりと係留系を回収することができてしまったのです。
「見つかりましたよ。」
「え、もう!?、そんなあっさりと?」
「GPSのポイントは、あまりずれたりしてないんですね。やっぱりぬるめ池は風のせいだったのかな。」
引き揚げた係留系。浮きとともにセンサーがとりつけられている
1月31日、筆者ら4人は再びぬるめ池湖畔に立っていました。そしてボーゼンと立ち尽くすことになります。
「また風が強いんだけど・・・。もしかしてデジャブ?」
「うん、気のせいじゃないよね、風が強い・・・。とりあえずお昼ご飯を食べますか。」
「今朝もお天気お兄さん(気象隊)が、昼頃には風は弱くなるって言ってたよ。」
早めのお昼ご飯を食べ、GPSを見ながら戦略を立て、風が弱まるのを待つ。お天気お兄さんの言葉通り少し風が弱まるのを見計らって、いざ風上側からボートを出しました。
「おっ!意外とボートの操作ができてるね。」
岸から見ていても、流されつつも操船できているようすが確認できた。2、30分は湖の上で係留系の捜索をしてもらっただろうか。
GPSを見ながら、どうやって係留系を回収しようかと算段する隊員たち。
「えー、中澤さん、感度良好ですか?どうぞ。」
「はい、良好です、どうぞ。」
「何も見つかりません・・・。とりあえずいったん岸に上がります。」との無線が (隊員には無線機が一人一台貸与されています) 。
岸に上がってGPSの軌跡をみせてもらうと、なるほどかなり奮闘した跡がみられました。ボートに乗る人を交代して、いざ筆者も係留系を探しに出ました。GPSを見ながらお目当ての場所をボートでウロウロ、かぎ爪を曳きながら探すも見つかりません。一体、どこにいったのでしょう。
波が落ち着いた時を見計らって、湖沼の水質センサーを使った調査を決行する筆者。波が高いときにボートに乗っても筆者には到底太刀打ちできないとみて、波が高い間は岸から応援する係に終始した。
「そろそろヘリのお迎えの時間だよ・・・。」
かくして、リベンジを果たせないまま、ぬるめ池ミッションは終了。残ったのは、むしゃくしゃして、国内訓練で引きずらないように言われていたのに、それを忘れて引きずってしまった際にできたボートへの傷(修理しました)と、徒労感でした。
次年次隊以降の生物隊員よ、あとは頼む!
(大学SNS寄稿文より加筆修正)
コメント