金を換金するところ、それがゴールドショップ
- Lab member
- 12 時間前
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前回、小規模金採掘の現場の一端を紹介した。
鉱石を砕いたものと、水銀、水などを一昼夜混合し、アマルガムを作る。
「水銀団子」である。
ではその先はどうなるのであろうか。
金アマルガムの状態では「金」ではない。水銀を取り除くことをしなければならない。
そこで登場するのがアセチレンバーナーである。このアマルガム状のものをバーナーであぶるとソラマメや大豆のような形になった素金が得られるのだ。
以前、おじさんが、手のひらに一粒、ほらと見せてくれたことがある。
「わぁ!! 「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシが千尋に小さな金の粒を渡してるシーンを思い出すわ!!」
カオナシは、千尋の手からあふれるほどの金の粒をわたしていたが、おじさんが見せてくれたのは一粒。それでも、それを得るのに、環境汚染をどれだけしているのか・・・。
カウンターパートの大学の研究者先生たちと調査に行くのだが、精錬工程の細かいプロセスはなかなか見れるものではなく、行った先々「見せてもらえたらとてもラッキー」そんな感じである。
「一度すべての (金製錬の) 工程をやってみたいよね。」と共同研究者の先生と話すくらいだ。
今回一緒に調査に回った学生に
「あそこの青い家、 BELI EMAS (金買います)ってかいてあるんだけど、見に行けないかな?」
「?、あの青い家? そんなこと書いてあった?」
「Yes. たぶん金の売買してるはずで、見てみたいんだけど」
「いいよ、見に行こう。」
彼はカウンターパートの先生に頼まれて、今回調査についてきてくれたが、ASGMのことを研究で取り組んでいるわけではない。

アセチレンバーナーで金アマルガムをあぶっている様子。
青い家の表側にまわってみたら、おじさんがいた。学生が聞くと
「いいよ、見せてあげる」
そう言って、小さな黒っぽい塊をるつぼに入れ、おもむろにバーナーを点火した。あしもとにはふいごがあり、風を送り込みながら、あぶっていく。慣れた手つきだ。
学生よ、興味深々なのはわかるが、あまり近づいたらアカンよ・・・。ものすごい水銀濃度なんだから、と思いながら私もついつい前のめりになってしまう。
かつて共同研究者がこういったバーナーであぶっているところの大気中水銀濃度を測定したら、とんでもなく高濃度だった。
このグラフは、とある地点のゴールドショップ内の濃度の変動である。ポータブルの水銀計で、周辺を歩きながら測定すると水銀団子をあぶっているすぐそばだと 1.0 mg/m3 にもなった。 (永淵ら、 2018 より)

汚染されていない場所での大気中水銀濃度は 1.5 ng/m3 程度だというのに。
小さな少し黄色がかった塊が残った。
横に格子の窓がついた小部屋がある。塊をそこにいる女性に差し出した。
女性は黒光りする石に、 “少し黄色がかった塊”をこすりつけた。ここの換金所では色見本と見比べて純度を見ているようだ。
まるで映画の世界に自分が入り込んだかのような光景に目が釘付けになる。

おじさんがあぶったアマルガムは、大して質がよくなかったようで、いくばくかのお金を受け取っていた。
「これだけ!?」
「それ、質がよくないわよ。」
そんな会話がされていた気がした。残念ながらインドネシア語で、よくわからなかったけれど。
こうしたASGMは家族単位といった規模で行われる。以前に素金を見せてくれたおじさんは年間で 600万円ほど (2016年ごろ、日本円に換算) 稼ぐと教えてくれた。
一攫千金にも見えるASGMだが、周囲の大気、水、土壌は大変汚染され、精錬過程では大気中にとんでもない濃度の水銀が放出される。
ヒトへの健康リスクも心配されるのだが、一方で、貧困問題などとも密接にかかわり簡単に規制がすすまない問題も抱えている。
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