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小規模金採掘と水銀汚染

  • 執筆者の写真: Lab member
    Lab member
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

インドネシアで何してるん?という友人からの問いに、


「うん。金採掘してるところで環境の調査してんねん。」

と答えれば


「え!? 金?」


と聞かれることもしばしばであるので調査の様子を少し紹介したい。



水銀の人為的な発生源は、化石燃料の燃焼、水銀を用いた金の採掘 (Artisanal Small-scale Gold Mining (ASGM、小規模金採掘) などがある。


本ブログにはときどきインドネシアの話題が出てくるが、この ASGM に由来する水銀汚染やヒト健康影響リスクの解析は、私がとりくむ研究課題のひとつである。



ASGM活動は、家族単位レベルの小さなグループが金の採掘活動をしていることを指す。このASGM活動では、金と水銀が結合しやすい (アマルガムを作りやすい) という性質を利用して、金を製錬する方法である。


水銀が安価なため大量に “気楽に”使われてきたのである。そして周囲の環境を破壊・汚染してきた。



ジャカルタ (スカルノ・ハッタ) 空港から国内線に乗り換える。直行便で3時間ほど。途中で給油する (ストップオーバー) する便に乗ると 6時間ぐらいかかることもある。




かなり深い湾奥部に、人口 30万人の都市がある。飛行機は湾の入り口が湾奥部に向かって滑走路にアプローチする。着陸前には街が見え、左手には金鉱石を採掘するために削られまくった山肌が見える。



まもなく着陸する。今回は深夜便だったため、早朝に到着した。


日本ではあまりないことだが、前方・後方、両方の扉が開き、乗客は前から後ろから降機する。ぼーっとしながらも、めったにないからと後から降機した。



ターミナルに入ると荷物返却台の周辺には人だかりができていた。

荷物返却台のものすごく近いところにカートごと乗客がへばりついており、廻って来る預け荷物の回収に苦労した。ひとをかき分け回収する。



空港

回転台にくっつきすぎじゃありません?



荷物を回収して外にでると大学とMOUを交わしているタドラコ大学の共同研究者や学生が迎えてくれる。日本が冬に差し掛かろうとするタイミングで赤道直下の国に降り立つと、汗がじわり。


「暑すぎる・・・。」


前日の昼間に日本を出発したような気がする。ジャカルタ空港ホテルにて数時間、仮眠をとるつもりが時差に翻弄された。


うとうとして目覚め、時計を見たらすでに飛行機が飛び立った後の時間になっていた。単に現地時刻になっていなかっただけなのだが、その後、一睡もできなかった。


十分休養できず、国内線に乗った。


到着したもののホテルにはまだチェックインできないし、限られた時間しかない。


「なんだか時間も曜日もわからないけれど、とりあえず調査に行こう」


さっそく朝ごはんを食べた。



あっさりとした麺だった。このあと「チョコレートがたっぷりかかったピサンゴレン (バナナの天ぷら)」も出てきた。




スーツケースからキットカット(抹茶味)を取り出して、お土産よ、と渡しつつ、必要な用具を取り出す。


学生と運転手のザキルさんとともに調査に出発する。

学生とは英語で、運転手さんとは

「指さし会話帳」か、 Google 翻訳か、身振り手振りで会話する。Google 翻訳はときどきめちゃくちゃだが、だいたいわかる。


時々表示される言葉がハングルになっているのだが、なぜだろう。

私がかつて留学していたことは知らないはずなので、おおらかで気にしていないだけか・・・。


ザキルさんはすでに私たちの調査に同行するのも2回目、なんとなく気ごころが知れ、時には率先して調査を手伝ってくれたりして楽しい。


なんやかんやと話しながら

ASGMエリアへと向かう。


音が聞こえる。

「あ、やってるね。」


ドラム缶のようなものがいっぺんにぐるぐる回る様子が車中から見える。金製錬の現場だ。


金鉱石をボールミルで砕いたのち、水と水銀、鉱石を混ぜたものをこのドラム缶状のものなかに入れる。攪拌をよくするためか、こぶし大の石が入れられていた。聞き取ったところでは24時間近くゴロゴロと回し続けるのだそうだ。





ドラム缶の端っこに回転ベルトが見える。前方の大きな車輪のようなもの先には動力がついており、いくつも並ぶドラム缶を一ぺんに回転させる。


その後中身を取り出す作業へと進む。

私が今回赴いたときは中身の掃除をしており、周囲は泥まみれ。作業するおじちゃんは裸足のまま泥水にまみれていた。


ふとみると、水分の少なった泥のたまり場には、ネコの足跡が見えた。




流れ出た泥は横にある池にためられていた。


一見すると、何をしているのかよくわからない風景である。


水銀体温計を割ったときに見えるコロコロとした水銀玉が浮いているわけでも、異臭がするわけでもない。


測らなければわからない水銀濃度、それゆえに人は平気で近くに住み、作業する。時々野良猫野良犬がうろうろする光景がみられる。


しかし、水銀を使うこの現場では大気も水も土壌も、そして周囲の植物も、あらゆるものの水銀濃度が高いのだ。その濃度はもう、とんでもなく高い。













 
 
 

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富山県立大学工学部 環境・社会基盤工学科 中澤研究室

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