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ぬるめ池湖畔にて

  • 執筆者の写真: Lab member
    Lab member
  • 2023年9月14日
  • 読了時間: 5分

私は陸上生物モニタリング部門の観測隊員として参加した。

今回は前回からの続き、昭和Aヘリからヘリコプターに乗り込んで、さあ、野外へ。大苦戦の湖沼調査の様子をお届けする。



生物班のミッションの一つに、湖沼の中に設置してある測器 (係留系) を回収するというのがある。



湖沼の中に設置してある測器 (係留系) の回収では、ゴムボートを持って行き、現地でゴムボートを膨らませて湖沼に浮かべ、GPSのポイントを頼りにその場所に向かい、


GPSで示されたポイントについたら、かぎ爪で引っ掛けて測器を回収するのだ。


測器は一番下におもりがついており、湖面から約1.5 m 水中に浮きがついていて、浮きとおもりの間に各種測器がとりつけられている。


浮きを湖面上に出していないのは、凍結した湖面の氷が湖岸側から溶け始めた時に、氷と共に取り残された浮きが風などによって引っ張られて、同じ場所にとどまってくれないため、



と日本国内での訓練で聞いた。


・・・きっと、浮きを湖面に出した状態で冬を越し、測器がながされた歴史があるのではないだろうか。



しかし湖面に浮きがあれば回収時も探しやすのに、水の中にある浮きを探すのは、なかなか難しい。


もうひとつのネックは風。ゴムボートは風にはめっぽう弱いという特徴がある。


実は、この係留系の回収、出発前に訓練をした。

訓練した日は風が少しあり、私はもともと運動が苦手なこともあり、思うようにボートを進めることに大苦戦。あとでGPSの軌跡をみたら同じところをぐるぐる回っていただけだった。


皆に笑われた。


唯一、スムーズにできたのは、ボートから湖に転落する訓練。ボートのへりにすわって、頭から後ろに落ちて、水に入った。これができたのは、かなり前にダイビングを何回かやった経験があったからだった!


経験があるって、大事だなと、落ちた湖に浮かんで考えていた。


「とりあえず、ボートの操船はむりだな・・・」


・・・訓練は受けた。でも操船は力のある男性サポートメンバーに任せようと決めて南極にやってきた。


1月21日、天気は快晴、私達4名は係留系設置湖沼のひとつ、ラングホブデ・ぬるめ池湖畔で立ち尽くしていた。


朝から風が強かったけど、池に白波も立っている・・・。


「ど、どうします?」

「これ、ボートで沖まででられなさそうですね。流されるしかなさそう。」

「うーん。お天気お兄さん(気象隊員)に聞いたら、昼頃から風が弱まるって言ってたけど・・・。」



4人で岩陰に隠れて、風をしのぎつつ早めのお弁当を食べることにした。

「寒すぎる~!!」


気温としては氷点下に近かったと思うのだが、まるで、早春、ちょっと時期の見極めを誤って極寒のなかお花見をしているような・・・そんな感覚にとらわれた。



ぬるめ池湖畔にて岩陰に隠れて、風と寒さに耐え途方に暮れる面々。青いヤッケが筆者。南極は紫外線が強烈なため、野外に出るときは紫外線対策に手を抜けない。サングラスと顔を覆うアイテムを常に身にまとい、誰かワカランという声が続出するもいつもこのいでたちだった。




野外でのお弁当、私達の班では、おにぎりを握り、その他シャケ、ソーセージ、今川焼などに火を通して持って行っていた。その他、パンやカップラーメン、お湯をいれて15分でごはんになる乾燥米飯なども用意する。


万が一、ヘリのお迎えが来ない場合に備えて、野営できる道具と食料一式持ってきた。


本日の作業時間は、ヘリから降りて4.5時間。ヘリは前倒しでやってくることも多く、お迎えの時間も気になるメンバー。


風はあまり弱くならないけれど、ボートを組み立てて準備開始。

ゴムボートはすべてのパーツを合わせて約25 kg、意外と重く、組み立てると風にもあおられ運びにくい。

まずはヘリポートに近いという理由で風下からボートを出して漕ぎ始めた。力のある男性隊員が漕いでも岸から20 m ほどのところまでしか沖にでられない。奮闘していましたが、力尽きて流されてきた。


「どうやっても、無理!」




白波立つぬるめ池。ゴムボートを出して沖に出ようとするも、流されることしかできなかった。



では、風上から流される戦略で行こう、ボートを持って湖を半周し、風上側へ向かった。湖の波を読みながら戦略をたて、いざ開始。


あるところまではボートを漕いで頑張り、その後はGPSの位置とにらめっこしながら係留系が設置してある地点を流されつつ通りすぎる。


流されては、湖畔を回ってボートを運び・・・と言う作業を6回ほど繰り返す。


数回やったところで、GPSを見る隊員と操船する隊員の息がぴったりと合うようになり、係留系のすぐそばを通ることができるようになっていた。・・・でも見つからない。


GPSで表示される行動の軌跡をみると、湖沼上ではほぼまっすぐ流されている線が数本、そして、岸を歩く軌跡の部分だけが(何回も歩いたので)濃くなるという結果になってしまっていた。


「ヘリのお迎え時間が近いよ~!」


あきらめて撤収した。


30分ほど前倒しでお迎えにやってきたヘリ。


ヘリポートを歩いていた、1匹のアデリーペンギンを飛行士の方が確認したのだろう。ペンギンが通り過ぎるまでヘリは上空でホバリング。


焦ったペンギン、砂利道を走る。

途中、筆者に気づいてよそ見をしたか、あろうことか、ペンギンが躓いてコケる現場を目撃した。


ちょっとほほえましい現場も目撃しつつ、ちょっとモヤモヤしながら、ぬるめ池を後にした。



(大学SNS寄稿文を加筆修正)


 
 
 

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富山県立大学工学部 環境・社会基盤工学科 中澤研究室

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