個性たっぷりの野帳はフィールド調査の議事録
- Lab member

- 5月20日
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とある委員をしていて、メーリングリストのやりとりをみていたら、議事録や現地調査の結果をどう残すかという話題が上がった。
この会では、現地調査に出向くと、議事録を担当する方が主にメモをとりつつ、録音するというやり方をやっているようだ。
やり取りが進み、録音を聞きなおすのには膨大な時間がかかるということに話が及んだ。
・・・話題に上がるまで気にしてなかった。
時間がかかるの、うん。知ってる。
ポスドク時代、大型研究予算で雇用されていたとき、プロジェクトの進捗に関する会合をするから議事をとってと言われて何回もやったなと思い出した。
なんなら最近も自分が代表のプロジェクト会議で、やってるよ・・・。
会話なので、当然、後で聞きなおしたら前後の文脈がぴったり合わずに進んでることもしばしば。
耳をそばだてて聞くも、「なんていった?」となることしばしばである。
でも、自分が発言しつつ議事録作成もするとなると、録音の聞き直しが発生し、上記のような状態になって疲弊する。
そして、(内心)めんどくさい。
現地調査の議事録かぁ・・・。
ん?
そういえば、私、フィールドに出たら、録音ってしたことがない。
でも、フィールドデータをまとめて論文発表するときに、困ったこともない。
フィールドに出たら活躍するのが、野帳である。

調査の足跡が記録された野帳たち。茶色はウォータープルーフ。落ち葉だらけの林床でこの茶色の野帳を落としたら、たちまち景色にのみこまれる。
ビニテを貼り付けといたら、なくさないだろう、と派手なビニテを貼り付けることが多い。
これ、本当に大事である。
研究者のブログや書籍のなかにも、野帳の大切さに関する記述を見かける。
年月日、調査場所、調査したメンバー、天気 をまず書きつける。
「年」は意外と侮れない。ルーティン的に赴く場所、スポット的に赴く場所・・・いろいろなのだが、
たまに、全く同じ月、日に調査することがあり、「これは何年の?」となることがあるのだ。サンプルのラベルも同様である。
次にGPSのポイント番号など。これも落とし穴ありである。私たちはGarminのGPSを愛用しているのだが、研究者毎にそれぞれGPSを携帯していたり、研究者自身が複数台持っていることがある。
「赤いGPS」とか 「montana650」とか、かならず書く。
書かなかったとて、その時は覚えてる。しかし、
①持ち帰ったサンプルを分析してデータが出そろい、
②解析して
③学会発表して、
(途中、いろいろな中断にもめげず)
④論文
という流れのなかで野帳を見直すと、書き落としは致命傷になる。
たまに10年前の野帳とか見てるからね。
「げげ~。もう10年もたったの。」
となりながら、記憶をたどる。
現地で測定したデータやGPS、天気だけではなく、現地の様子は記憶の思い出しに大変役に立つ。
海外調査の場合だと、
「飼い犬に吠えられた」
「パン屋の近く」
「人が騒いでいた」
「この後お腹が痛くなってトイレに駆け込んだ」
「ゴミだらけだった」
とか書く。野帳とデジカメの写真を見るとたいてい整合性が取れるのだ。
ある時、後輩が海外調査に行ったときの野帳を見ていたら、
素敵なお姉さんがいたのだろう、
「宿泊先に、きれいな現地のお姉さんがいた。遠くから会釈したら、会釈を返してくれた。」
と書いてあった。
「へ~!?(笑)」
「それでそれで?続きはないの?」と、ついつい野帳をめくってしまう。
べつの後輩の野帳には
「この日から、先生 (学生時代の指導教官) は調査についてこなくなった。」
(当時、大学近くにあった山岳を観測タワーと見立てて、大気中水銀濃度の鉛直方向の分布に関する調査をしていた。)
と書いてあった。
個性が出ておもしろい。
こんな後輩たちを見習って、わたしも野帳にメモを書きまくるようになった。
調査に出ている期間は、毎夜、疲れていてもその日一日を振り返ってメモる。

ある日の私の野帳を1ページだけ公開。
韓国に関する記述は、私が 2002年に (22歳頃) 留学した時の印象である。当時ときどきびっくり事件が起こっていた。
パラパラと野帳を見ていたら、あるホテルのシャワーの排水溝に難儀していた顛末が書いてあった。そうだった。
排水溝・・・穴は開いているので当然流れると思ってシャワーを浴びたら、みるみる水浸しになったのだった。
それでも無視して・・・水量は少しだけににして浴びていたら
下水のにおいがだんだんしてくるし、水はシャワー室の外まで・・・。
「サイアク~!!」
泡だらけのまま大慌てでシャワー室から出て行って、部屋にあったすべてのタオルを持って戻り、水をしみこませて排水。
シャワーどころではなくなった。
議事録ではないので、書いたままの野帳。川に落とすとか、紛失したらそれこそ「死んだ」も同然なので、心配になって、夜な夜な写真に撮ってみたりする。
(大学に帰ってきたらすぐさまPDFにとる)。
研究室では、ゼミに配属されたら、ノート(実験ノート)を配っている。
ゼミ資料も今どき、印刷して配布。
最初に私が言うことは
「なんでもメモること」
気を抜くと、聞いてるだけで、ノートも開いてないってことがよくある。
すぐ「メモは?」って私が言うので煙たがられてるかもしれない。
きっと、「また聞いたらいいわ」状態なんだと思う。
説明したことをそうそう何回も教えてくれないよ、世の中。
・・・なかなか通じない。
でも、学部4年生だった学生がやがて大学院生になり自分がいざ後輩に教えるという段になると、
「先生、あいつ全然メモりません。」
「この間言ったのに、また教えんなん・・・。」
と、わたしに言ってきたりする。
いや、それ、一年前のあなたにそっくりそのセリフ返すよ、である。



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