大阪土産といえば、551の蓬莱のぶたまんである。省略して「551」。JR大阪駅の「チルド豚まん」を売っているキオスクはいつも行列だ。今回、JR大阪駅を通ったら珍しく行列が短く551を買って帰ってきて冷凍した。
チルドでないホカホカを購入するとそこら中に「私は551もって歩いてます。」と言いふらしているのと同じぐらいにぶたまんの香りをまきちらかすことになるから要注意である。
1月、休日の昼下がり、学生部屋の電子レンジで 551をひとり温めて、これは関西ローカルCMさながら「551のぶたまんがあるとき~!わははは!」だな、と、そんなことを考えながら電子レンジが仕事をするのをぼうっと見ていた。
富山で学生に言ったところで、怪訝な顔をされるだけだろうが、このCMは関西圏ではとても有名である。近畿大学がオープンキャンパスの広告にこの「 551があるとき~!」を彷彿とさせるデザインを採用するぐらいに知名度がある。
阪急電車でその広告を見たときには驚いた。
と、そこに4年生が登場。
「お、卒論?」
「はい、ろ過しに来ました。」
「卒論提出、ちかいものね。」
言うが早いか荷物を置いて出て行った。
自室に戻り、ぶたまんを食べて満足していると、ふたたび彼がやってきた。
「循環水流ポンプの音がものすごいです。このまま使っていいですかね。」
どれどれ、見に行ってみた。
なるほど、ちょっとやかましい。
水量、水温を確認。ポンプ部分を持ち上げて詰まりがないかも見た。

「うーん・・・。わからないねぇ。」
「だいたいどこの研究室も持っているから借りることはできると思うけれど、土曜日だしね。だましだまし使うか・・・。」
そんな話をして廊下に出た。
循環水流ポンプのわめき声が廊下に響き渡っていた。
「こらアカン。」
休日に人がいそうな研究室は、隣の先生のところか・・・。実験室を訪ねてみたら院生がお仕事中だった。
「よかった。ここの研究室なら、人がいるかなと思ったのよ。」
「ははは。だいたいいますよ。」院生が笑って言った。
ドライ真空ポンプを借りてきた。
循環水流ポンプは四角い水をためる部分がついているため、やたらとかさばる。しかし借りてきたドライ真空ポンプは「ポンプ」だけなのでとてもコンパクト。
チューブをつなぎなおしたら使えそうだ。
「やたらとコンパクトになりましたね・・・。」
「そうね・・・。循環水流ポンプは業者さんにみてもらうように頼むわ。まだ数年しか使ってないうえ、毎回きれいにしているのに、なんでかなぁ。」
「もし壊れてたら、ドライ真空ポンプを買おうかな。でも今買ったら、恨まれるかもしれないね。毎回このかさばるものをわざわざこの実験室まで運んで使ってきたのに、って。」
「はい、よくわかってるじゃないですか。ここの実験室、自分達の実験室と違って水栓にホースがついていないから、ここに水をためるのも、いちいち1Lビーカーに何回も水を汲んでやってるんですよ・・・。このポンプだったらものすごい楽です。」
「あははは。そんな苦労が・・・。やっぱりそうだよね。・・・4月になってからコッソリ買おうかしら。」
何で循環水流ポンプを買ったのだろう・・・。
所属研究室でドライ真空ポンプを使っているところもあったはずなのに。据え置くイメージがあったのかもしれない。
夜までかかってろ過を終え、あっという間に顕微鏡での試料観察を熱心にやりはじめていた。
卒論は大変である。
自分で調査・分析し、論文を読み、文章やパワーポイントにまとめる。
いくらやっても修正されたり議論したり・・・果てしない作業だ。
こんなことをいうのは、なんだけど
卒・修論は手を抜こうと思えば、いくらでも「手抜き」もできる (と思う) 。
大学に学びに来ていて、なんだかんだ理由をつけて先延ばししたり、サボッたり・・・集大成の仕事 (卒・修論) に手を抜くことに何の意味 (得) があるのかと、私は思うけれども。
自分にできる精一杯をやってみれば、うまく行くことも行かないことも、やるだけ身についてるよ。今はわからなくても。
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