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南極にむかう "しらせ"の艦内にて

 大学院に進学して、フィールドに出て調査をし、さまざまな研究を目にするようになり、研究をするために南極に行く人たちがいることを知るようになりました。「いつか行ってみたいな」から、約15年の時が流れ、63次南極地域観測隊に参加することができました。大学SNSに書きおろした文章を中心に、ご紹介します。



 

流氷域をすすむしらせより撮影


 


2021年11月10日、 南極観測船 しらせ は横須賀港を出発しました。新型コロナウィルスの影響もあって、隊員は横須賀にて乗船、一路昭和基地を目指します。今日は12月10日、乗船してちょうど1か月が経過し、南緯 68 度に達しました。隊員はしらせの船内で無線の使い方、応急処置の仕方、発煙筒の使い方、緊急時の救出訓練など、さまざまな講義や訓練を受けます。時には赤道通過とその後の安全航行を願う赤道祭などの楽しい行事もありながら、昭和基地に向かいました。


出航後しらせは、11月14日にフィリピンのレイテ沖、11月17日に赤道を通過、このとき気温は30度を超え、熱帯の空気を感じました。オーストラリア、フリーマントルに寄港し、燃料や食糧を補給しました。その後、「吠える40度」「狂う50度」「叫ぶ60度」と形容される、南緯40~60°の暴風圏へと入りました。暴風圏では船は前後に、左右に大揺れ(動揺) し、時にはまっすぐ歩くこともできない状態になりました。廊下の端から隊員が歩いているのをみると、みんな斜めになり、時には思わぬ方向に「おおっ」と振り回されることもあります。


私たちはしらせの食事をいただいているのですが、なかなかおいしくて日々食べ過ぎ気味です。訓練や講義などがなく、天候がよい時には甲板で運動すること(艦上体育) が許されているのですが、しらせ艦内ではやはり運動量も少なくなります。気になるのは体重。

さて、動揺する船の中で体重を測るとどうなるでしょう? 答:体重が(私の場合)、35kg から55kgの間を動揺に合わせて行ったり来たりするので、測定できません。しらせの食事で太ったかどうかは、服のキツさと鏡をみて判断するしかありません。




では、もう一問。動揺する船の中で体幹トレーニングのような運動をすると、どのような感じでしょう? 答:必要以上に負荷がかかり、辛く、バランスをとるのも難しくなります。一説によると動揺が激しいときはバランスをとるために筋肉を多く使うので太りにくいとか。真相のほどは不明です。



暴風圏を抜けると、あたりは静寂。流氷、氷山なども見え始めます。白夜に向かう南極圏の日没は22時半ごろとなり、ついには日没がなくなりました(白夜)。日没がある最後の日は、雲がまばらにしかありませんでした。艦橋にて地平線を本当にゆっくり沈む(もしかすると完全には暗くならないのかも)太陽を見ていました。パリっと寒い、静かな海を滑るように走るしらせ、艦首左には沈みゆく太陽と夕焼け、そして真艦首方向には月。南極が近づいています。


(大学SNS寄稿文より加筆修正)



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